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11月15日(日) 殴りたい男

「表に出ろ」は…23年前。若かった。

 前にも書いたが、会うたびに、「身体は大丈夫か?」と必ず聞く男がいる。顔色が良い悪い、太った痩せたと立男を心配しているようだ。だが、これ以外の話題を聞いたことが無く、「こんにちは」「では元気で」ですれ違えばいいのにと思う。善意通り越し今や悪意としか思えなくなっていた。

 祝いの席でこれをやられた。席が少し離れているし、まさか宴の場ではないだろうと油断していた分、ショックだった。いつものように、「皆さんのおかげで何とか生き永らえています」と印を押したような答えで終わらせようとしたが、腹が立ってきた。「あなたには心配かけないように死にますから」と答えた。だいたい、立男に何か異変が起きたとしても、特に伝えなければならない関係でも相手でも無く、まして大勢の人が静かにしている場所で変な話題を振ってくる鈍感さがわからない。

 「会う度になぜ同じことを聞くのですか?」と尋ねたら、「心配だからさ」と言う。当方の気分の悪さを全く感じていないようだ。2人に共通の知人が亡くなり、立男が同じ病気で入院したのは事実だ。だがたまたま居合わせた、ここらの事情を知らない人間がいるところで、いやたとえ知っている人ばかりだとしても、こういうことを平然と聞く非常識に閉口する。支持政党と貯金残高と夫婦関係、そして健康問題なんかは人に聞いちゃいけないことだと思う。だが、放っておくといつまでも続く気がした。露骨に嫌な顔をしたがあの男にはわからないだろう。ともあれ、テーブルの下で手は拳固にしたが、飛びかかるのを我慢してよかった。

 家に帰ってママヨサンに、「今度同じこと言われたら殴る」と話したら、少し間を置いて「悪気は無い人です」と言う。「俺には十分悪気だ。失礼だ」と言ったら、「でも、殴ったら絶対に駄目」なんて言う。やっぱり、そうなのか…、そうだよな、でもそうかな。

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