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華の光

15年間、最北の地に文化の種を蒔き育てられた「あとりえ華」と併設する「ぎゃらりい華」が閉じる。

華に関係した方々のごく内輪の茶話会。絵を描く人、写真を撮る人、写真も絵も畑もする人が一人一人思い出を語り静かに聞いた。初めて話しを聞く人もいた。楽しかった。オーナーの孝子さんから聞いた、英生さんが何でも一人でできる自立した人だったことを知った。「非日常の空間と時間をお客さんに味わって貰う」のだから「(自分たちは)貧乏でも貧乏たらしくしてはいけない」という話しが強く印象に残った。波風氏のモットーの「品のある貧乏」に通じる。

茶話会が終わり、華を出る。原野に陽が落ち、空の下の方に星が一つだけ光っていた。あれは金星かなと言ったら、「そうですね。金星ですね」という声が後ろからあった。あとりえ華の窓ガラスの光を背にして、家に帰るのがもったいないように佇んでいる私たち。目が慣れてくると、小さな星がだんだん見えて来た。ああっ、こんなに星があったんだ。深い暗闇でも背に光がある安心感、そのおかげで徐々に夜空の有様が見えてくるような喜び。『華』の存在というのは、そういうことだったのか。

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