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歯を抜く

写真だけでも何だか怖い

今日から4日連続の雪マーク予報。但し、氷点下前後で推移とのこと。

 ア行の5音に濁点、つまりバラエティーに富んだ「ヴ―」の唸り声が後ろの囲いから延々と聞こえる。抑えた声だから我慢はしているのだろう。途中で「もう終わったのですがねえ」と医者の呆れた声も混じる。その途端、切ないハアハアッの息絶え絶えの表現に変わる。面白いなあ。あの声の調子だと中級老人に違いない。

 今日は歯を抜く日。順番を待つ身には堪らない。「恐怖感」というのは、決定的瞬間の直前の、想像の臨界点がその正体。映画「ジョーズ」がここらを上手に使ってる。リクライニングシートに拘束された身では、足先なんかを見て気分を紛らわすしかない。あれっ、かかとの部分が足裏の真ん中にある。この短さは、同じデザインのママヨさんのを履いてきたからだ。足先を揃えてやや突っ張り気味に裏を隠したりする。ここでカッコつけても仕方が無いでしょう、と心で笑う。白衣の影が隣から音もなく。麻酔の注射器を握り「口をお−きく開けてください」…ウヴウッ…。まさか、瞼の辺りに涙なんか滲んでいないだろうな。

 あんまり治療に文句言って騒ぐから、「機械貸してあげるので自分でやってください。お金はいらない」と言ったら静かになった、と知り合いの歯医者さんが言っていた。市内でも有名な人、夕方にこっそり口止め料の高価な酒を持ってきた、とも言っていた。こういう類は男で、女の人では今まで一人もいないと断言。
 立男は胃カメラ検査を毎年1回やっている。あられもない声はなるほど男ばっかりだ。出産時の痛みは男なら発狂もの、というのは本当かもしれない。歯と違って、あんな大きいのが身体から抜けるんだもんなあ。

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