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「面接試験」

正真正銘「青春の門」

【「ブラジル」から続く】立男が中2の頃、テスト範囲の教科書ぐらいならじいっと見ているだけで表やグラフもページ毎に一発で記憶できた。だがそれは、その時だけの、何かの間違いみたいな現象だった。その時の「やればできる」栄光だけが脳に刻まれ、大人になってからは「やればできる」を言ったり書いたりが仕事になり、そうしている間にいつしか信条となった。だが、今の年になり自分がどんな生き方をして何を得たのかと尋ねられたら、若者風「べつに−」としか答えられない。が、(楽しげに)「べつに−」と言うのが、自分にも周りにもストレスを与えない人生の鍵かみたいな気がする。「やればできる」は大事だが、気を張り詰めると疲れる。(具合の良い)「入れ歯できる」の方が大事なのだと固いものがめっきり駄目になった初級老人は思うのだ。それにしても、あの時の記憶力が今もあればナア…中3の頃、欲望に目覚めなければナア…、悪い友達と遊ばなければ…ナア。

 思い出したぞ。18禁ピンク映画館(入場)の初挑戦が中2だった。入場した英雄の奴からは、切符売り場では何歳?の確認ではなく干支を聞かれるというので辰の4つ前の干支は何だった?なんて悪い仲間どうしで真剣に練習した。中学校の脇を流れる夕方の土手だった、「コッチコーイ、コッチコーイ」と野球部が真面目に練習している声がグランドから聞こえていた。切符売り場のおばさんに(切符もぎり嬢はお姉さんじゃないらしい)です・ます体の敬語はないだろうなんて指摘しあった。結局、坊主頭は誤魔化しようが無くて断念したが、あんなに真剣に面接試験の準備をしたことはない。人生を賭けるぐらいの気持ちだった。恐るべし欲望、そして青春【次回「贅沢な生活」に続く】

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