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冬の散歩道

「気晴らしや健康のために、ぶらぶら歩くこと」(広辞苑)より、「(行く先・道順などを特に決めることなく)気分転換・健康維持や軽い探索などのつもりで戸外に出て歩くこと」(新明解)が、波風氏の『散歩』。氷点下10度で「ぶらぶら」は無い。転ばぬよう、重心低め・やや「がに股」のすり足・前方はもちろん周辺注意、なのだ。そして、用事があってこそ歩く気も湧くので、辞書的な散歩とは少し違う。

波風氏は自然美というものが分からない。海とか山とかだ。作為感じる風景画や写真が苦手。しかし、自然と人工物が調和していると立ち止まってしまう。そこらをくっきりと映し出す白い今が良い。雪と鉄路、小川と鉄橋、照明のスキー場、埋もれた遊園地、冬道のバス停、色鮮やかなブルトーザー…ワクワクする。立ち止まって見入る。この習性を知っているはずなのに、ママヨさんは波風氏を置き去りにして、さっさと行って小さくなってしまう。風流に浸る時間は短く処世の気苦労は永い。もたもたしているとスーパーで買った冷凍食品が溶けてしまうのは確かだけどね。

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