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一本道のバック

絶体絶命…でも、何とかなるもんだね。

 ほぼ「北の国から」みたいな地を訪ねる。ママヨさんが育った人里離れた北の開拓地。毎日1時間も歩いて通ったという小学校の跡地に開拓の碑が建っていた。そこから車1台やっと通られる坂道をしばらく登り、「ここに家があった」というところで停車。側の大きな松は半世紀以上前に植えたものだと言う。そこから見える風景は、広がった牧草地と取り残された雑木林だけだった。前を走ってもらった姉夫婦たちと「ブルで地面を削ってあったから登れたけれど雨が降ったらアウトだね」、「この先、行き止まりだったらバックでは絶対に降りられないね」なんて話しながら、ママヨさん一家の苦労に思いをはせた。一体全体ここでどうやって生活したのだ?水は?電気は?途中、長い坂道に家が、家の跡が一軒も無かった。「ここはハイジの世界だ」と、20年前に一度来て感じたことを今回もまた思い出していた。

 かすかにエンジンの音、まさか…。次第に轟音に変わり、両側を夏草が覆う急な坂道の上からブルトーザーが姿を見せ始めた。こういう驚き、いや恐怖感は久しぶり。鉄橋を歩いていたら後ろから汽車が来る「スタンドバイミー」の感覚だ。「絶対に無理な」バックで下るしかないわけで、ママヨさんの真剣な方向指示を聞き、道を外さないよう注意して、何とかかんとか。途中の丁字でターンできた時の嬉しさと言ったら…。あれから3日、捻った首がまだ痛い。

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