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探せない男

背景もピントがあっている谷口ジロー

 「見たいものしか見ていない」そうだ。ママヨさんの波風立男評。
  捜しものができないのも、こんがらがった紐をほどけないのも、そのせいだと言う。少し視点を変えたり、辛抱したら解決できるのにそれができない。ものごとの中心だけを見ようとする、その分周りは興味持たず見る必要性も感じていないようだと言う。短く言うと、視野が狭いということだ。自己推薦書的に言えば。直線的に本質に迫ると言うことだ。絵や文章にもそんな感じがするらしい。聞いて、ふーんと思う。納得いったわけではないが、思い当たることはある。

 ママヨさんも花を描く。ママヨさんは、茎も葉も鉢も花と同じピントで描く。立男は違う。色が面白いと思ったら最初にその色をクレパスで置く。その上から鉛筆で気に入った形の記憶として線を引く。当然、細かいことから遠いが、そうしたいんだから仕方ない。この逆がママヨさんだ。一生懸命に形を描き、葉の葉脈や花の雄しべ雌しべなんかも真剣だ。色鉛筆で慎重に仕上げする。少し前までは、こういう絵は苦手だったのだが、それが変わった。こういう自分とは違う個性を身近に感じることで、立男君の個性はこんなところにあるんだよ、と見つけてもらう感じがするからだ。こういう種類の探しものがこのごろ増えた.

■画像は、「欅の木」(谷口ジロー作)。先週はこの作者のを6冊読んだ。小さくても大きくても一コマに描かれているすべてにピントがあっている絵柄。地味だが人間を正面から取り上げた主題、それを表現できる圧倒的な画力に魅せられる。ただ、「せんせいの鞄」は小説でも入れなかったが漫画でも駄目だった。村上春樹に入れないのと同じ感じ。

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