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暮らしの底

戦後庶民の暮らしを採取し『暮らしの手帳』に掲載したのをまとめた花森安治さんの本が面白い。かつぎや、東大法学部卒の小使いさん、大部屋女優、ピーピーのおっさん、特攻くずれなど、まだ1954~1960年までしか読んでないが1968年まで続く。

 

「ぬすっとせんかぎり、人間はなにして食うてもええんや、それをわらう奴は、わらう方がアホじゃ」(ピーピーの)なんていう言葉にはっとさせられる。楽な暮らしは一つも出てこない、生きていること、働けば何とかなること、家族を大事にすることが当たり前の価値感、これが実に新鮮で明るい。戦争を生き延びた、生きる芯が途方もなくしぶといのだ。

 

今はどうなのだろう。仕事がなくなる不安は、暮らしの底が抜けること。それは生きる希望が絶望に変わること。1968年から53年経つが、社会や政治がどのくらい丈夫な暮らしの底を作ってきたのか、自分の心身は厳しい環境の中でどのぐらいしぶといのかが図らずも測られのが今年なんだろうな。

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