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最後の方まで面白そう

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マチュア作家のエッセーでこんなに面白いのは珍しい。まず題材。エッセーとは作者の自己宣伝・自己満足が本質、秘すべき恥ずかしさを露わにしてナンボだがピタリまとを得ている。文体も簡潔、適切な言葉とセンテンス、リズムが良い。起承転結のお手本みたいな展開。

 

波風立男氏は真夏8月に30日間風呂に入らない記録を持っている(笑)。10日ぐらい入らないうちにどうでもよくなり、そのうち何日間入らないでいられるか試した。夏休みに入り交際中のママヨさんが実家に帰り挑戦環境が整えられたのだった。今みたく風呂嫌いではなかった20歳の若気の至り。

 

このエッセーの凄さは、95歳の夫の風呂嫌いを、90歳の奥さんの「風呂に入って欲しい」一心であたふたする心情をつたえる言葉の巧みさ。情景をちっとも述べてないのに老夫婦の暮らしが浮かぶ。「これどうなるんだ?」と、私小説世界へ誘われる気分(笑)。
いいなあ、永く連れ添った二人の暮らしのドキドキ・ハラハラ感を晩年になっても書き残す意欲と姿勢。健康的だ。「ようし俺も」と、エッセーの方で無く54日突破の方にいたく興味示す波風立男氏であった。

 

※画像は、10/11朝日新聞(生活欄)の囲みエッセー記事から。

http://booklog.jp/users/namikazetateo