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青い影

古い時計

 イラストは家の軒先と物置の間に見える空。1週間ぐらい前の夜空だ。満月なのに、オリオンがはっきり見えた。冬の大三角形もわかった。今年はいつになく雪が降らないから、夜も星が見える。立男は顔に似合わず月夜だとか星だとか、夜の海だとか薄明かりの灯る電柱だとかに心惹かれる。
 居間のベランダを大きな障子にしてある。カーテンが嫌いだからだが、老人性早起きの立男は、夜明け前直前の青い影がここに映るのを見るのが好きだ。体全体に青い空気が染み渡るよう呼吸する。寒い冬はこの感覚がいっそう冴えてくる。電灯を点け昨日の新聞の切り抜きを始めたり、本を読むまでの一時なのだが、この淡い感覚がほどけるまでの数分が何だか好きだ。
夕方もなかなかいい。明かりを少し我慢をすると、暗い部屋に青い障子が浮かぶ。昔読んだ「陰影礼賛」なんか思い出す。

 プロコル・ハルム「青い影」。1968年だから立男16歳、いやはや、純喫茶「ブラジル」の頃だよ。ラジオからこれが流れていたなあ。

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