カウンター

電話帳のこと(下)

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(前回から続く)
戦後の豊かな時代を作った人たちが電話詐欺の主な被害者なのは、情報化の闇に疎いからだけでなく、「いつかは電話を」の人生経験が大きいと思う。
薄っぺらな電話帳の淋しさは、東京五輪がエポックメーキングの「三丁目の夕陽」世代の大人と子どもが共通に感じるものだろう。あと一歩で「団塊の世代」の波風氏も、電話で日本中の人と人が繋がっている明るい不思議さと安心が、より便利になったはずの電話機で、それが削りに削られ寒々とした不安になり、『私』を世間に晒したらとんでもないことになると教えられたのはそれほど前ではない。文明への疑い、自己表明の不安、人間関係の複雑さ、そして霧散した「中流家庭」意識の象徴が、「薄っぺらい電話帳」みたいな感じだ。

波風立男宅の電話番号は今回から電話帳に無い。昨年秋には、着信電話番号表示と着信拒否機能なんかも契約。妙な勧誘の電話が何回かあったからだが、そういう類いのがバタっと来なくなった。
波風氏とママヨさんはスマホを使うから固定電話使用は受信しか無い。経済的に無駄だしやめても困らないが、スマホには信頼をおいていない。「便利なものは実は不便」なものだ。(終わり)

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