カウンター

開ける力

試供品シャンプーの袋、いくらがんばっても開けられない。手に石鹸がついているせいかと浴槽から出たばかりなのに洗ってみたり、椅子に座っているから力が入らないと立ち上がってやっても駄目。必死さが通じ何とか開封したが少なくない中身飛び散る。閉塞感が満ち満ちている世界の片隅で、小さな袋の片隅つまんで奮闘する裸老人(笑)、憐れ(涙)。

 

ビンの蓋を開けられない、カップラーメンを包むポリエチレンを破れない、玉葱の皮を剥がせない、紙やビニール袋をめくれないのは手の保湿成分枯渇のせい。だが今、人生を少しづつ閉じていく波風氏に対して、世界の側も波風氏を閉ざしていこうとしている、なんて感じ(涙)。

 

ママヨさんにここらのことをしんみり話したら、「あの袋はハサミでないと開けられませんよ」「えっ、手で開けたの。スゴーイ」なんて言われ、まんざらでもない波風氏。

老人はちょっと褒められたら、子ども以上に素直に喜ぶ。世界は突然開かれるのであった。

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