桑原武夫(1904~88)
えらそうな 物言いには
(言うとるわ 言うとるわ)
もったいぶった 物言いには
(あほらし あほらしやの鐘が鳴りまっせ)
思イ邪マ無ク 語ルベシである
意深クシテ 詞浅クアレである
高級かどうか でなく 誠実かどうか
尊ぶべきは 風流でなく 野暮だ
雲の中を 歩んではならない
つねに はじめに 人間ありきだ
新しい思想を 説くことをしなかった
新しい態度を 鮮やかに生きた人だった
長田弘著『なつかしい時間』にあった、桑原武夫氏の死を慎んで長田氏が書いた詩。大学の指導教授の教官室に桑原武夫氏からのハガキが額に飾られていた。「俳句=第二芸術」論の文学者としか知らないが、詩人はぎりぎり短い言葉で本質を掴み、普遍的な意味を与え、それを追悼の言葉にできるのか。