カウンター

続 ラジオで村上春樹

聞く村上春樹の文章は、とてもわかりやすい。一粒一粒がキラキラしている言葉が快く漂っていたり降っている感じ。読む村上春樹にこれを全然感じなかったのは、「何を例えているのだろう(何の暗喩?)」と身構えながら読んでいたからかもしれない。まさか、世界的に評価されている作家が実に狭いスマートな人間関係(恋人や妻や友人)でのセックスを含めた出来事とそれに対する感情をこんなふうに薄味な物語にするはずが無い、俺の読み方が変なのか?と思わせられてきたからだ。

 

この逆が大江健三郎で、狭い人間関係でのセックスを含めた出来事と感情の物語はもの凄く難解だ。分かりやすい文章をあえて翻訳調に変換するのもあり。代表作『燃え上がる緑の樹』を読んだ衝撃が未だに失せないのは、荒唐無稽な出来事と作者の読書の引用に辟易させられながら「神と宗教はどう作られるのか」、「死ぬのは恐ろしいことなのか」、「祈りの意味は何か」といった解明不可の命題を読者に突きつけ引きずり続けて離してくれない。薄味に対する超濃い味。

 

ラジオの「村上春樹を読む『ドライブ・マイ・カー』 短編集『女のいない男たち』より」(NHKラジルラジルで聞き逃し再生可)は、全15回のうち昨日5回終了。未だ暗いのに起きてしまった老人が、ぼんやりした頭にありそうで無い無さそうであるような秘密の話を聞かせて貰い徐々に目覚めさせてくれるのは悪くない。とりあえず小説でも読んでもらおうか胃に(もとえ耳に)優しい奴を、という選択は朝珈琲が習慣の波風氏には最適。未だ10回はマイルドな味をリアル珈琲の前に楽しめる。

http://booklog.jp/users/namikazetateo