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永遠の高校生たち(3)

全部が懐かしい記憶

(前号から続く)
 最近、家でこういう話(自分の年齢とか、年相応の生活とか)が多くなった。鏡に映る自分の姿かたちが随分と歳がいっていて、頭ではこれより相当に若い感じがしているのに、なんてことをパッチワークしているママヨさんに勝手にしゃべったりする。買い物先で久しぶりに会った人や、横断歩道をゆっくり歩いている人を車の中から見ていると、「あなたよりもあの人の方が若く見えます」と、立男氏の話を聞いてない感じなのに突然そんなことを横からニコリともしないで言われ驚くことがある。波風立男氏は実に歳相応の姿かたちで、気分が歳不相応らしい。そう聞いて、心が高校生の中級老人って言うのも面白いなあと思う。映画『不思議な彼女』で多部未華子が歌う「哀しくてやりきれない」が突然に浮かんだ。

波風立男氏には、しばらくすると少しづつ思い出せるのだが、直近の過去を一度きれいに忘れてしまう癖がある。これに気づいたのは何回かの人事異動の時で、新任校に少し慣れた時頃だった。前に、2年間働いた前任校への行き方を忘れてまごまごし、我ながら呆れた。嘘みたいだが本当だ。隣の学校へ移動し3ヶ月目だった。一旦忘れた上で思い出すものが記憶だ。最近、ここ半世紀分の記憶が最近のものほどぼんやりしてきた気がする。。豊かな老人生活への前向きの可能性なのか、それとも呆けの兆候なのか。
「半世紀分」とうちながら「半生記文」「反省気分」の言葉が浮かんで苦笑した。まあ、記憶の基底が、高校時代の頃のようだから忘れ切るには大分間がある。しばらくは大丈夫だろう。文庫本「昭和三十年代の匂い」を読み、同じようなストライクゾーンの、「駄菓子屋図鑑」(奥成達著:ちくま文庫)、「なつかしの小学校図鑑」(前著同)を続けて読んだ。小学校時代の記憶も大丈夫だと確認した。まてよ、認知症は、新しい記憶を忘れ古い記憶が確かだったなあ。(連載3回分、これで終わり)

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